自賠責の認定は厳しい
PTSDと医師に診断された場合でも、実際には後遺障害として認められにくい傾向があります。なぜなら、PTSDかどうかの判断自体が困難であり、また、PTSDが当該交通事故によって発生したかという因果関係の立証も困難であるからです。
自賠責保険では,PTSDを後遺障害として認定するにあたっては,一律に「外傷性神経症」として14級10号を認定するにとどまっています。
裁判でも厳しい傾向に
裁判では、その交通事故がPTSDを発症させる程度のものかというA基準の判断が争点になります。もっとも,裁判所は、このA基準に関しては、かなり厳格な立場に立っており、容易にA基準に該当するとは認めてくれません。 仮に,PTSDと認定された場合でも、人は多かれ少なかれ日常生活においてストレスを抱えているはずなので、PTSDがその交通事故によって発生したという因果関係を立証することが必要になります。強度の神経症などの精神症状をもともと持っていた人がPTSDになった場合、後遺障害と認められたとしても、損害賠償額が減らされる可能性があります
DSM-IV A基準
その人は、以下の2つが共に認められる外傷的な出来事に暴露されたことがある。 |
(1) 実際にまたは危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、その人が体験し、目撃し、または直面した。 |
(2) その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。 |
本当の争点
裁判所は,PTSDに対して厳しい姿勢をとっているように見えますが,裁判所が本当に関心があるのは,PTSDと診断できるかどうかではなく,「交通事故の態様、程度、身体障害程度が、被害者の精神疾患を発症させる程のものか」と言うことなのです。その事故の態様、被害の程度からして、その精神疾患が発生するのは当然と考えられる場合なら、PTSDであろうとなかろうと、その症状の程度に応じて後遺障害を認定する。
逆に、その事故の態様、被害の程度、精神疾患を引き起こすほどのものでない場合には、因果関係を否定するか、素因減額をして、賠償額を大幅に減額させる,というのが裁判所の姿勢と言っていいでしょう.
裁判例
7級 |
PTSD(横浜地判平成10年6月8日) |
8級 |
症状固定後5年間は8級と9級の中間として喪失率40%,その後の5年間は11級,さらにその5年間は14級(前橋地判平成12年1月27日) |
9級 |
大阪高判平成13年3月27日 |
12級 |
座骨神経損傷に伴うカウザルギーにつき12級(横浜地判平成5年3月29日) |
非該当 |
多 数 |