交通事故全体に占める
自転車関与事故の割合が年々増加
交通事故全体に占める自転車関与事故の割合は年々高まる傾向にあります。全国の自転車関与率が20%前後で推移しているのに対し、平成23年中の都内の自転車関与率は37.3%と高い割合を占めています。
これまでは、自転車による被害は一般に軽く見られがちでした。しかし、近時、自転車利用率と事故が増加し、自転車に乗る際に求められるルールも厳しいものとなって来ています。これに合わせるように、裁判においても、自転車事故を自動車事故と同様の扱いをし、賠償額も高額化していると言われています。
自転車事故の責任論
自動車事故と異なり自転車には自賠法の適用がないので、自賠責保険はありません。自転車事故に対する任意保険も普及していませんので、加害者の賠償資力の問題があるのが自転車事故の一番の特徴です。そこで、自転車の運転者以外の者の責任を問うことができるかの検討が重要です(責任論)。
小3の自転車で重傷、母親に220万円賠償命令 2011年9月、当時小学3年だった男児の自転車と衝突し、重傷を負ったとして、福岡市の60歳代の男性が男児の母親に治療費など約260万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が6日、福岡地裁であった。 池田聡介裁判官は「男児への指導が抽象的で、監督義務を果たしたとはいえない」として、約220万円の支払いを命じた。 判決によると、男性は福岡市早良区の歩道を歩いていた際、1人で坂道を下ってきた男児の自転車と衝突、右足の骨を折るなどした。 男性側の訴えに対し、母親は「交通ルールを守るようにと、日頃から注意していた。現場は男児にとって急な坂で、監督義務を果たしたとしても事故は防げなかった」と主張していた。 池田裁判官は「歩道は見通しが良く、適切な運転操作をしていれば事故は防げた」とし、「指導が具体的ではなかった」として母親の監督が不十分だったと認定。男児の年齢を考慮したほか、男性にも周囲に注意していなかった落ち度があるとして、賠償額を決めた。 男性の代理人弁護士は「事故防止のため、運転技術が未熟な未成年者には十分な指導が必要で、保護者としての義務を認めてくれた」と話した。 (2014年3月7日08時07分 読売新聞) |
自転車事故の刑事責任
自転車事故を起こすと、民事上の賠償問題とは別に、刑事上の責任も問われます。現在の実務においては、自転車の運転手が主体の場合、重過失致傷罪が多くの場合に適用されています。もっとも、事故の態様によっては、単純過失が認められ、過失傷害罪、過失致死罪が適用されます。
もっとも、起訴されるかどうかは、事故の内容、事故後の対応や、被害者の怪我の程度などにより、検察が判断します。自転車事故の場合、自動車事故の場合と比較して、刑事訴追しなければならないような重大な事故につながりにくいこと、発生件数も少ないことから、自転車の運転手の刑事責任が問題となることは少ないので一概にはいえませんが、怪我の程度が軽い場合、過失が軽度な場合などは、不起訴になることが多いといえるでしょう。