交通事故によって受けた怪我について
どこまで治療費が認められるのか
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(1)必要かつ相当な範囲
治療費は,病院に実際に支払った実費が損害となります。病院からの請求書や領収書は証拠となりますので,大事に保管しておいてください。
治療費は,当該交通事故から発生した傷害の治療に必要かつ相当な範囲であれば損害として認められます。必要性・相当性がないときは、過剰診療・高額診療として否定されることがあります。
また,交通事故で足を怪我し,その治療期間中に階段でつまずいて腕を怪我したので,足の治療と同時に腕の治療もしたというような場合にも、交通事故との因果関係が問題となることもあります。
なお,症状固定後は,治療をしても効果がないので,治療の必要性が否定され,損害として認定されないのが原則です。
(2)必要性を否定された裁判例
頚部捻挫等の受傷をして入院した被害者3名の入院治療につき,入院中の態度,特に外出,外泊の事実から,その必要性を3分の1と認めた(東京地判平成7年11月28日) |
(1)過剰診療とは
「過剰診療」とは,診療行為の医学的必要性ないし合理性が否定されるものをいいます。治療費は、交通事故から発生した傷害の治療に必要かつ相当な範囲であれば実費全額が認められます。必要もないのに長期間入院したり、通院を続けたりするなど、医学的に必要性・相当性のない過剰診療にかかった費用は損害として認められません。
診療内容が過剰かどうかの判断は、カルテ・レントゲン・CT・MRI等の画像の他、入院であれば看護記録等を精査した上で現在の客観的症状を確認し、通常の症例とを比較して治療内容は適正化、処方されている薬の内容はどうかなどから判断します。
(2)裁判例
頸部捻挫等を受傷して入院した被害者3名の入院治療費につき、入院中の態度、特に外出、外泊の事実から、その必要性を3分の1と認めた(東京地判平成7年11月28日) |
(1)高額治療とは
「高額治療」とは,診療報酬が,特段の事情がないにもかかわらず,社会一般の診療費水準と比べて著しく高額な場合をいいます。
治療費は、交通事故から発生した傷害の治療に必要かつ相当な範囲であれば実費全額が認められます。交通事故で受傷した場合の治療にも健康保険を利用することができますが、病院側から自由診療を進めてくることがあります。これは、自由診療によるほうが、治療費の計算において点数が高いためです。そのため、同一の治療内容であっても、健康保険を利用した場合の治療費の数倍かかってしまうことがあります。(健康保険での通常の医療行為というものは、その行為について何点という点数が決まっていて、その点数の合算に1点に10円を掛けて金額を出します。しかし、自由診療の場合には1点20円、30円とカウントしても差し支えなくて、現にこういった計算方法が行われているのが実情です)
しかし、一般に自由診療の場合、健保の2倍を超える分については特別の事情が無い限り必要性・相当性を否定され、損害として認定されない場合が多いようです。
そこで、被害者の過失が大きい場合、相手方が無保険の場合には、健康保険の利用を検討すべきでしょう。
(2)裁判例
診療単価を1点15円(健康保険基準1点10円の1.5倍)とした例(福岡高判平成8年10月23日) |
(1)特別な事情が必要
原則としてその病院の通常の平均的な室料が基準となります。ただ、救急車で運ばれていった病院で特別室しか空いて場合や、感染症の危険があるなど症状が重篤なので特別室に入れられたというような特別の事情がある場合(傷害の部位・程度、被害者の社会的地位・身分、満員等諸般の事情からみて合理的と認められる場合)には、個室の特別料金も損害として認められます。事前に医師と相談して、怪我の度合いや精神状態を考慮して個室が妥当だと判断された場合には、医師の判断で個室を利用した旨を保険会社や加害者に伝えてください。
(2)裁判例
重篤のため83日間の入院につき,日額2万円の差額を認めた(大阪地判平成3年1月31日) |
(1)東洋医学の治療費が認められる場合
これらの費用は,原則として医師の指示がある場合に認められます。医師の指示がない場合でも、症状の回復に有効で、施術内容が合理的かつ費用・期間等も相当な場合に限って、損害として認められることはあります。
東洋医学を受ける際には、主治医に施術を受けることを伝え、同意を得るように打診してみて下さい。また,東洋医学を受けながらも整形外科で経過観察を受け、東洋医学によって症状が改善していることをカルテ・診断書に残してもらえると,その有効性を立証できるようになります。
(2)裁判例
頚部・腰部捻挫のダンプカー運転手(14級)の接骨院の治療につき,石の明確名な指示を受けたことの証明はないが,ある程度の痛みを緩和する効果は合ったものと認められるとして,120万円余りの請求のうち30万円の限度で認めた(大阪地判平成13年8月28日) |
(1)一般的には認められないが,支出が相当なら
原則として症状固定後の治療費は認められません。症状が固定し以上、これ以上治療しても症状が改善する余地はないとされるからです。ただし、症状の内容・程度・治療の内容によっては、リハビリが必要な場合、保存的治療が必要な場合などには、相当な範囲で治療費が認めれれることもあります。しかし、治療しなければ症状が悪化する(将来支出が確実な場合)などの特別の事情が必要であり、これが認められる例は多くはありません。
将来の費用には治療費のみならず,将来の手術費・将来の付添看護料・将来の入院雑費・将来の交通費等の費用も含まれます。
将来の治療費が認められた場合には、将来の費用支出時までの中間利息は控除されます。
(2)裁判例
下半身麻痺による介護リハビリ費用として24万円を認めた(浦和地判平成7年12月26日) |
(1)その他の治療方法(温泉療法など)も、医師の指示があるなど、治療上有効かつ必要がある場合に限り、治療費が認められます。
(2)裁判例
5級高次脳機能障害等(併合3級)の小学生(女・固定時13歳)につき、脳機能改善に有効な音楽療法の一環として必要との医師の診断を受けて通ったスクール費用、及び交通費13万円余を認めた(大阪高判平成19年4月26日) |
治療費の支払い、特に、交通事故の後遺症認定において、医師の診断書が重要なポイントとなります。担当の医師とのコミュニケーションが十分でないために、自身の症状が後遺症診断書やレセプトに反映されず、後遺症等級認定が認められないケースは少なくありません。
担当医とのコミュニケーションがうまく行っていない場合には、治療機関の変更を検討する必要があります、ただし、治療機関の変更に際しては、事前に加害者側の任意保険会社の了承を得ておくことを忘れないようにしてください。とくにむち打ち症の場合には、医師から治療の打ち切りを指導されているのではないかと勘繰って、打切り交渉のきっかけとなることもありますので、注意が必要です。