付添看護費用は、大きく分けて、現在の付添看護費用、将来の付添看護費用に分けられます。付添看護費用は、原則として医師の指示がある場合、または受傷の程度、被害者の年齢等により必要性がある場合に認められます。
付添看護費
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現在の付添看護費 |
入院付添費 |
職業的付添人 |
近親者の付添人 |
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通院付添費 |
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将来の付添看護費 |
付添看護費は、原則として医師の指示がある場合、または受傷の程度、被害者の年齢等により必要性がある場合に認められます。診療記録等により被害の程度が重篤であるなどの客観的症状や、被害者の年齢、病院の現実の看護体制及び家族の現実の付添状況からその必要性等を具体的に立証することになります。付添人の必要性は一般的には、被害者本人が付添人の助けを借りずにトイレに行ける程度に回復すれば消滅するとされています。
看護婦や家政婦などの職業的付添人を雇った場合には、実費全額が認められます。
近親者による付添の場合は、受傷の程度、付添の程度によって幅がありますが、入院付添1日につき6000円~8000円程度(「赤い本」では6500円)まで認められています。
付添人の数は原則として1人で重複付添は認めらませんが、被害者が重体である場合や幼児である場合には重複付添が認められた例もあります。
遷延性意識障害等(1級3号)の高校生(男・17歳)につき,重篤な容態やリハビリを要する事情から,日額7000円,960日間合計672万円を認めた(千葉地判平成17年7月20日) |
通院付添看護費
(1)症状または幼児等必要のある場合
通院の場合に付添看護費が認められるのは、医師の指示がある場合、傷害の部位・程度、年齢(幼児・老人)、身体の障害等からして被害者が一人で通院することが困難な場合です。
通院付添看護費は、1日あたり3000~4000程度(「赤い本)では3300円」が基準となります。
乳歯喪失の傷害を負った女児(4歳)につき,通院付添のため母親が欠勤した場合に,通院付添費用として日額1万円,6日分を認めた(東京地判平成8年12月10日) |
将来の付添看護費(介護費),雑費
(1)医師の指示または症状の程度により判断
医師の指示がある場合、または重度後遺障害等症状の程度によりその必要性がある場合には、将来の付添看護費(介護費)も損害として認定されます(原則として後遺障害等級の別表第1、1級1号または2級1号の場合に認められますが、症状によっては3級以下の高次脳機能障害者にも認められることもあります。)。
介護期間は、原則として厚生労働省の簡易生命表の平均余命を使用して算定します。もっとも、植物状態及びこれに近い症状の重度後遺障害者の生存可能期間については、感染症にかかりやすいなどの理由によって、通常人よりも生存可能期間が短いとされています。そのため、平均余命年数未満の生存可能期間を用いた裁判例も見受けられます(札幌地裁昭和58.2.15 交民16.1.159)。
職業付添人の場合は実費全額、近親者による付添の場合には、介護の程度(常時介護か随時介護かなど)によって幅がありますが、1日6500円から1万円(「赤い本」では8000円)が認められます。具体的な看護状況次第では、複数人の介護者が必要であるとしたケースも見られます。そのため、介護の実態を詳細に立証するための資料収集が重要となります。
支払方法としては、一括支払のほか、定期支払の方法もありますが、一括支払の場合には、中間利息が控除されます。将来介護費は、以下の計算式によって算出されます。
(年間の基準額)×(生存可能期間に対するライプニッツ係数) |
四肢・体幹失調,右手振戦,高字脳機能傷害(3級3号),永久気管孔造設に伴う発生不能(3級2号)等(併合1級)の被害者(男・固定時18歳)につき,随時介護を要する程度のものであるとして,平均余命期間59年間,日額6000円を認めた(東京地判平成16年6月29日) |