葬儀費用、仏壇・墓碑の購入費用
死亡事故の際にかかる火葬・埋葬費用、読経 ・法名料、御布施・供物料、葬儀業者の費用、花代、弔問客に提供する食事代、遺族自身の葬儀参列のための交通費等の葬儀費用に関しては、実務上、定額化が図られており、130~170万円の範囲(「赤い本」では原則150万円)であれば実際に支出した額の賠償が認められています。
もっとも、香典返しについては、香典という贈与を受けたものに対するお返しであって、損害ではないという考え方から、請求することができません。
墓石建立費や仏壇購入費については、常に認められるわけではなく、被害者の年齢、境遇、家族構成、社会的地位、職業などを総合的に考慮して、社会的に相当な範囲で損害と認められることがあります。
弁護士費用
不法行為の損害賠償訴訟において、弁護士費用については、 裁判実務上、請求認容額の10%程度が損害として認めらています(弁護士費用特約がある事案の場合であっても,弁護士費用相当額の損害が認められることとなっています)。
ただし,これは裁判をした場合であって,任意での和解においては認められません。
家屋・自動車等改造費
(1)必要かつ相当な範囲で
受傷の程度により、今後の生活のために家屋の改造(家の出入口・風呂場・トイレなどの設置・改造費,ベッド・椅子などの調度品購入費等)、自動車の改造が必要とされる場合、被害者の後遺障害の程度、その内容、被害者の現状、家族の利便性などを考慮して、必要かつ相当なものについては、損害として認められます。
改造費などは、介護を要する障害等級の場合に認められることが多いのですが、より軽度な障害等級であっても、現実に生活上の利便性を考慮して認められることもあります。
自動車等耐用年数の関係で将来買換えが必要なものについては、一台限りではなく将来の改造費用も損害として認定されますが、中間利息が控除される例が多いようです。
(2)裁判例
71歳の夫と2人暮らしの1級3号の被害者(女・64歳)につき,自宅改造費969万円余,天井つり下げ方式リフト設備220万円余を認めた(仙台地判平成13年12月27日) |
装具、器具等購入費
(義手、義足、車いす、義眼、かつら
コンタクトレンズ、盲導犬費用等)
(1)必要かつ相当な範囲で
後遺障害により失われた身体機能を補助し、生活上の困難を軽減するために必要な装具等に関しては、必要かつ相当な範囲で損害と認定されます。
耐用年数の関係で将来買換えが必要なものについては、将来必要となる分についても損害として認定されますが、中間利息が控除されます。
(2)裁判例
・頭部の醜状跡(12級13号)の男児(3歳)につき,人工カツラ代1回2セット40万円余,耐用年数5年,10回分403万円余りを認めた(那覇地沖縄支判平成3年6月17日) |
・義歯について,保険診療では補綴材料や治療内容に制約があるとして,10年ごとに自由診療製作費の80%,平均余命まで総額127万円を認めた(東京地判平成14年1月15日) |
医者への謝礼、見舞客への接待費、見舞返し、快気祝い
(1)否定するのが最近の傾向
通常医師へ支払う治療の対価は、治療費に含まれているはずなので、医者への謝礼は損害と認定されないのが最近の傾向といえます。症状、治療内容などを考慮し、社会的に相当な範囲であれば損害として認められることもありますが、単にあいさつ的に謝礼金を渡したという程度の場合は相当とは認められません。裁判においても、重大な手術をしたようなケースで、認められても数万~10万円程度となります。
見舞い客に対する接待費、快気祝い等は道義上の出費であり、また見舞金と均衡がとれているのが通常なので、損害としては認められていません.
(2)裁判例
緊急搬送先の病院で頭部の血腫除去手術及びその後の治療にあたった脳神経外科の医師に対する謝礼につき,緊急搬送時昏睡状態にあったものの,治療の末,集中治療室から一般病棟に移ることが可能となったことを考慮すれば,社会通念上相当な額といえるとして,支払った額30万円を認めた(さいたま地判平成21年2月25日) |
裁判例は赤本を参照
進級遅れによる授業料等
事故により入院を余儀なくされ、学校において進級が遅れた場合、そのために余分に支払うこととなった授業料は損害として認められます。また、遅れを取り戻すための補修費も相当な範囲で損害として認められます。しかし、事故により受けた怪我が比較的軽微な場合、事故による休学と留年の因果関係の認定が困難であるとして、認められないこともあります。